新たな道を切り拓くPwC卒業生に迫る~株式会社FOR YOU 浜口 真人氏編~
PwC Japanグループでキャリアを積んだ後、新たな道を切り拓いて活躍している卒業生がたくさんいます。どのようなスキルや経験が、その後の仕事に生かされているのでしょうか。
株式会社FOR YOUで執行役員管理部長を務める浜口真人氏は、PwCのメンバーファームを1度退職した後に再びジョインするという経験を持ち、複数のスタートアップと関わりながら各社の組織づくりと成長を後押してきました。今回は、現在の仕事に生きているPwC時代の経験や内外を行き来するキャリアの在り方、将来の展望などについて語ってもらいました。
日本のコンテンツ産業の未来を見据え芸能・広告スタートアップに入社
2008年にあらた監査法人(当時)に入社した私は、公認会計士登録後1度退職し、上場会社の経理やスタートアップでのIPO準備業務に従事した後、2016年にPwCあらた有限責任監査法人(当時)に再入社しました。最終的にPwCに在籍したのはマネージャーを経験した後の2019年までです。現在は、株式会社FOR YOUというスタートアップで管理部長を務めています。
FOR YOUはハイブリッドエージェンシーを標榜し、広告と芸能領域で事業を展開しています。広告事業では広告戦略の策定から制作・運用までワンストップでサービスを提供しており、タレント事業では所属するインフルエンサーやタレントの育成とマネジメントを行っています。また芸能企業としてのネットワークの強みを生かし、通常の広告会社には接点がないタレントのキャスティングなども行っています。会社自体は9期目で、安定して成長している状況です。
入社の直接的なきっかけは、エージェントからの紹介です。私の友人にスタートアップに強い転職エージェントがいて、就職先として面白いスタートアップを探していたところFOR YOUを紹介していただきました。
私自身は音楽やアニメなど日本のコンテンツが好きで、まだまだ潜在的な成長可能性が大きいと考えていました。タレントマネジメントの延長で日本のエンタメコンテンツを世界に届けたい――。そんなオーナーや経営陣の考えに共感し、最終的にジョインすることを決めました。
仕事に対峙する体力・精神力と競争に勝つためのベース能力を習得
PwC時代には会計士としての知識はもちろん、まず働く体力や仕事の作業スピードを身に付けることができました。若い方が多いスタートアップにおいても、周囲から「働く体力がすごいですね」とよく言われます。PwCで身に付けた仕事に対峙する肉体的・精神的なタフさは、どこにいっても必ず役立つ基礎的な力です。
また社会の競争を勝ち抜くベースとなる能力を磨いたのもPwC時代です。会計士試験に合格した優秀な同期が多く、協力と競争のなかで自分の差別化された強みを見出すことを常に意識させられました。
PwC時代に、時価総額が2~3兆円ある大企業の監査プロジェクトに従事した時の記憶は今でも鮮明です。決算情報を出すまでのプロセスが盤石ではない企業であったため、クライアントにOKを出す最後の瞬間まで緊張とプレッシャーが尽きませんでした。またとあるグローバルメーカーの海外子会社に不正が発覚した時のこともよく覚えています。連日報道が錯綜するなか、チームで海外子会社を転々としました。世の中で話題になっている事象の裏側を調べて監査する経験はなかなか得難いものです。体力的・精神力に厳しかったですが、乗り越えることで仕事に対するタフさを一層身に付けることができました。
なお、事業会社の管理部門責任者としては、監査法人と同じレベルで会話していく必要があります。私はいつまでもPwC時代に培った感覚を失わないよう、意識的に知識のアップデートを心がけています。一方、監査法人と事業会社の業務の違いについては、割り切って楽しむようにもしています。会計士として、監査法人業務から事業会社の詳細な実務まで一通りやり切る能力を築くことは簡単ではありません。実際にそのようなキャリアを持つ会計士も多くないでしょう。私はその両面をカバーできることを、自分の強みの1つとして捉えて伸ばしていきたい考えです。
ネットワークの信頼感と懐の深さが魅力
私はPwCの雰囲気がとても好きでした。入社当時のあらた監査法人は設立3年目。新しいことをやろうという意気込みが法人全体から感じられ、働き方のスタイルも比較的自由でした。先輩・後輩の関係もフラットかつ距離が近く、オフィスに行くのが毎日楽しみだった記憶があります。きっとその「自由に楽しく働く」という原体験が、今もスタートアップを職場に選び続ける理由になっているのかもしれません。
なお再入社した際も、PwCの皆さんは私を温かく迎え入れてくれました。ブランクがあり、キャッチアップも大変でしたが、周囲からサポートいただけてとてもありがたかったです。そしてまたスタートアップに転職する時も、「一緒に仕事できたらいいね」と心強く背中を押してもらいました。
私にとってPwCのネットワークは、今でも大切な財産です。転職したスタートアップ企業の財務デューデリジェンスをPwCの元同僚にお願いしたこともあります。互いに良く理解する間柄なので、仕事の進み方は圧倒的にスムーズでした。組織として外部にいたとしても、ネットワークの中にいつでも居場所がある――。卒業生にそのような感覚を持たせてくれる信頼感と懐の深さが、PwCの魅力だと思います。
どんな場所よりも優秀な人材が集まる組織で切磋琢磨してほしい
私の当面の目標は管理部長を務めているFOR YOUのIPO準備をしっかり進めて、スムーズに進行していくことです。並行して、IPOやバックオフィス整備の相談を受けているスタートアップをサポートしながら成長を後押ししていきたいです。
私は今40代ですが、体力的に50歳を超えて同じ働き方を続けていくのは難しいかもしれません。事業会社の監査役なども会計士が求められるポジションの1つですので、将来的にはそれらの役回りに挑戦するのも面白そうだと思っています。
いずれにせよ、今後もスタートアップに関わり続けることは変わらないと思います。好奇心は尽きませんし、さらに深く掘り進みたいです。日本社会がより活性化していくためにもスタートアップにはどんどん活気づいてほしい。そのために、自分ができることに全力で力を傾けていこうと思います。
PwCは社会の中でも特に優秀な人材が多数集まる魅力的な組織です。先輩はもちろん同期から学ぶこともまた多いです。切磋琢磨してシニアやマネージャーの職階まで経験すれば、どのプロフェッショナルファーム、もしくは事業会社でも活躍の場を得られる能力が養えるでしょう。
近年、生成AIや暗号資産など、これまで想像すらできなかった新しいビジネスやサービスが続々と登場しています。FOR YOUでも、生成AIを活用した事業モデルの可能性などについて日々議論しています。ただ専門かつ最先端の領域であるため、コアな部分まで触れることがなかなか難しいと感じています。そのような競争力のある技術やサービスをPwCのグローバルネットワークの中にいる皆様に広めていただき、私たちのような新興企業もその恩恵にあずかれたらありがたいと思います。
また日本はそれら先端的な産業でなかなか強みを発揮しきれていない現状があります。PwCにはグローバルの英知を結集して、新しいビジネスをどこよりも早く柔軟にキャッチアップしていただくとともに、監査やコンサルティングの力で日本の新しい産業を牽引していく役割を期待しています。そしてこれから入社する人材の皆様と、いつしかPwCのネットワークの中で刺激的な仕事ができる日を楽しみにしています。