PwC Japanグループでキャリアを積んだ後、新たな道を切り拓いて活躍している卒業生がたくさんいます。どのようなスキルや経験、人的ネットワーク等が、その後の仕事に生かされているのでしょうか。

佐野容子氏は、PwC Japan有限責任監査法人（以下、PwC Japan監査法人）で会計監査やシステムレビュー、内部統制や内部監査のアドバイザリー業務に携わった後に独立され、企業の会計コンサルタントなどを経てVarinos株式会社の監査役に就任しています。

卒業生という外部からの視点で、PwCでの経験を振り返ってもらうとともに、現在のキャリアについて語ってもらいました。

企業のミッションとPwC のAlumniの存在に後押しされ監査役に挑戦

私が在籍しているVarinos株式会社は、ゲノム検査の開発・提供を行う臨床検査会社です。世界で初めて独自開発・実用化に成功した子宮内の菌環境を調べる「子宮内フローラ検査」、体外で受精させた胚の染色体数を解析し、異常の有無を調べる「着床前ゲノム検査」など、生殖医療および産婦人科領域の検査を提供しています。

私は 2022年7月からVarinosで監査役を務めており、会計監査、業務監査、また外部の会計監査人とのコミュニケーションなどを担当しています。

私はこれまで、会計監査やシステムレビュー、内部統制アドバイザリー、経理のコンサルタント業務などに従事してきました。昨今、コーポレートガバナンスコードの改訂に伴い、女性役員としての仕事のオファーを多方面から受けるようになり、監査役ならこれまでの経験を生かせるのではないかと思い興味を持ち始めました。

そんな折、PwC出身のVarinosのCFOから紹介されたことが、同社の監査役に就任するきっかけになりました。「ゲノム解析技術を通じて家族の未来をつくる」というミッションに共感しましたし、PwCのAlumniがマネジメントチームの一員ということも転職を決めた理由です。安心感もあり、「やります！」と即答させていただきました。

それぞれのバックグラウンドを理解・配慮する工夫が人生の財産に

会計士試験に合格後に就職活動に専念することになりましたが、正直、その頃は各法人の違いがそれほど分かっていませんでした。ただ、当時のあらた監査法人（現PwC Japan監査法人）は設立2年目で、これから新たに法人をつくりあげていく段階にあるのではないかと思い、入社を決心しました。

私がPwCあらた、およびその前身ファーム（現PwC Japan監査法人）に在籍したのは2007年から2018年の7月までです。入社後に配属されたのは大阪事務所のアシュアランス部（MDS）でした。その後、東京事務所のシステム・プロセス・アシュアランス部（SPA）に異動してシステムレビュー業務に就き、そこからガバナンス・リスク・コンプライアンス・アドバイザリー部（GRC）に籍を移し内部統制アドバイザリー業務や内部監査支援に従事しました。

PwC時代には、会計監査、システムレビュー、内部統制監査に関する実務経験の他に、プロジェクトマネジメントなどの経験やスキルを培うことができたと考えています。

卒業後に最も役に立っている経験は、東京事務所のSPA在籍時にバックグラウンドが多様な方々と仕事をしたことです。SPAには会計士だけではなく、元システムエンジニアのメンバーなども多く在籍していました。

大阪から異動した当初は、会計士同士であれば通じる共通言語のようなものが通じず、ストレスになることが少なくありませんでした。ただ大阪で内部統制監査を行っていた時も、現場の方々とのコミュニケーションの際に、会計用語では通じなかったことを思い出したのです。

そこでSPA在籍時には、メンバーの能力を最大限に生かせる業務の割り当て、タスクの細分化、コミュニケーション、スケジュール管理などを徹底し、期日までに業務を終わらせる方法を自分なりに工夫することにしました。バックグラウンドが多様であるということは、各人の得意分野が異なるということ。言語の違いを理解することや、伝え方ひとつで仕事の進み方や質が変わることが徐々に面白くなり始めました。

その経験は、経理支援や内部統制支援アドバイザリー業務など、PwC卒業後にさまざまな仕事を請け負う際に役立っています。またプライベートで対人関係を構築する上でも、かけがえのない大きな財産となっています。

自分ならではの工夫をすぐに実践させてくれる包容力の高い組織

在籍している時は、大変なことも辛いこともあったので、冷静に捉えることができませんでしたが、離れてしばらくすると「PwC愛」が沸々と湧いてきました。というのも、PwCには各個人の判断や行動を許容してくれる文化があったからこそ、日々業務を工夫できたことに気づいたのです。

自分の考えを行動に移せるのは、ある程度仕事を任されているからです。PwCではそれが普通でしたが、一般事業会社や世の中では必ずしもそうではないことを外に出て初めて知ることになりました。若い年次から仕事を任せてもらえたのは、自分のキャリア形成にとってとても良い環境だったと改めて感じています。

今でも個人的に仲の良かったPwCの元同僚とは一緒に仕事をしたり、プライベートでも連絡を頻繁に取り合ったりしています。皆さんから信頼を寄せてもらい、新たにお仕事をいただく時には、特にPwCネットワークのつながりに価値を感じます。

PwCの卒業生同士は同じカルチャーで育ってきたため、互いに共通言語が成立します。やり取りがスムーズに進むだけでなく、仕事の品質面においては絶対的な信頼が置けると感じています。

冷静にリスクを見抜きさらなる成長に向けて助力

会社の成長期にはスピードが重視される場面もありますが、一方でルールに従わないといけない側面もあります。ルールから逸脱する場合には、ブレーキをかけるのが監査役の仕事です。監査役が活躍しすぎる会社は基本的に問題があると思います。Varinosでは取締役の方々がルールに沿って真摯に業務を遂行されているので、監査役が必要以上に活躍する機会はなく、今後もないことを願っています。

一方で、Varinosでの経験は新鮮なものばかりです。これまでの監査業務は出来上がった数字を見る立場でしたが、現在は経営陣の意思決定をリアルに目にすることができます。警戒感のアンテナを張りながら、法令違反などの可能性があれば適切なブレーキをかけていくのが、私がなすべき仕事だと考えています。

監査役就任から約10カ月が経過し、Varinosの事業内容についての理解が徐々に蓄積されてきています。今後は従来の監査経験から得られた一般的な視点だけではなく、Varinosの事業内容にフィットした視点を持ち、常勤監査役の立場から助力していきたいと思います。

昨今では人生100年時代とよく言われるますが、私は生涯仕事したいタイプです。先のことを考えると、世の中に対して役立っていると実感できる仕事をしていることが自分のやりがいになると思います。

個人的には、マリンスポーツが好きで環境に興味があります。最近は沖縄にサンゴの産卵を見に行き、そこで環境保護に尽力されている方たちとも出会いました。将来的には培ったスキル・経験を生かして、環境保護のために何か世の中に対して役立つ仕事に挑戦したいと漠然と考えています。

PwCは良い意味でかなり自由な組織だと思います。
私自身、チーム内ではかなり自由に仕事をさせていただいていました。また工夫や行動を周囲で暖かく見守り、ピンチになると助けてくださる諸先輩方の存在があるので、安心してチャレンジできます。会計監査などの専門的な実務経験だけではなく、自己解決能力などさまざまなソフトスキルも身につけることができたと感じています。今後、新たな人材がPwCネットワークに加わり、新たな出会いが広がっていくことに心から期待しています。