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新たな道を切り拓くPwC卒業生に迫る~freee株式会社 花井一寛氏編~

PwCグループでキャリアを積んだ後、新たな道を切り拓いて活躍している卒業生がたくさんいます。どのようなスキルや経験が、その後の人生に生かされているのでしょうか。

freee株式会社(以下、freee)常務執行役員 支出管理プロダクト担当、freee finance lab株式会社取締役として活躍する花井一寛氏は、自身のビジョンを実現すべく、PwC Japan有限責任監査法人やPwCサステナビリティ株式会社でさまざま業務に従事。中小企業の生産性と持続可能性を向上させるという新たな目標を見出し、転職先であるfreeeで新規事業開発に奮闘しています。

卒業生という外部からの視点で、PwCでの経験を振り返ってもらうとともに、現在のキャリアについて語ってもらいました。

環境課題に対する意識から見つけた中小企業の生産性向上という新たなテーマ

freeeは個人事業主から1,000名程度の規模の上場企業向けに、クラウド型ERPシステムを中心とした統合型経営プラットフォームの開発・提供を行っています。一方、freee finance labはfreeeの100%子会社として、金融分野の新規事業を通じた経営プラットフォームづくり担っており、現在は法人向けにEPRと統合されたクレジットカード「freeeカード Unlimited」や、自分に最適なビジネスローンを探せる「freee資金調達」を提供しています。現在、私は経費精算や請求書処理など企業の支出取引に関わる稟議からカード・送金といった決済までを担う支出管理プロダクトの企画及びマーケティングの責任者を担っています。

高校生の頃から環境分野の仕事がしたいと考えていた私は、大学と大学院で経済や環境関連の学問を専攻しました。ただ当時はサステナビリティの仕事がたくさんある現在の状況とは異なり、環境関連の会社やビジネスが圧倒的に少ない時期でもありました。一般の会社に入社したとしても、CSR部に配属されるというようなキャリアしか思い描けないだろう。そう熟考した結果、環境ビジネスが増えたタイミングで転職できるよう、会計士の資格を取得することにしました。

PwCに入社したきっかけの1つは父の薦めです。父は旧青山監査法人(PW)出身であり、幼少期からPrice Waterhouse という企業名は幾度となく耳にしていました。説明会に参加したところ、あらた監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)として設立3年目と組織が若く風通しも良さそうだったことに加え、チャレンジングな雰囲気を感じ、「ここしかない」と直感的に入社を決意しました。

また、PwCでサステナビリティに係る業務経験を積むなかで、外部企業やシンクタンク関係者と情報交換する機会にも恵まれました。その際、環境だけでなく、少子高齢化や各種インフラの劣化など日本社会のサステナビリティにも深刻な課題がたくさんあることに気づき、なかでも中小企業の生産性向上に強い関心を持ちました。

自らビジネスや事業を立ち上げることで、サステナブルな社会づくりに貢献したい――。そんな思いを強くした私は、「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げるfreeeに共感し、転職することになりました。会計士である自分に対し「バックオフィスは一切関わらなくていいから事業を伸ばして欲しい」という期待を寄せてくれたこと、またエンジニア、セールス、マーケティングなど多様性に富んだメンバーと一緒に働きたいと思ったことなども転職を決めた理由です。

会計&サステナビリティの現場で力を養ったPwC時代

監査業務や税務で独立するという考えがなかった私は、ビジネスの方向に進むためにPwCでさまざま経験をしたいと考えていました。そこでトレジャリーマネジメント、M&Aのデューデリジェンス(DD)、環境DD&ファイナンスなど各部門のマネージャーやメンバーに相談し、各チームに入れてもらったり、業務の手伝いをさせてもらったりしながらキャリアを積んでいきました。

私のPwC在職時の職責は、財務報告アドバイザリー(FRA)部兼PwCサステナビリティ・シニアアソシエイトです。FRAで特に印象に残っているのは、大手金融機関が買収したタイの銀行のUSGAAPコンバージョンプロジェクトに参画したことです。2カ月ほどタイに常駐し、現地チームと拙い英語でやりとりしながらも一体感を持って仕事をしたのは良い思い出です。

PwCサステナビリティでは、オマーンでガス火力発電所の環境社会DDを担うプロジェクトに参画したことが忘れられません。私は大学院で環境修士を取得して、PwCあらた監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)に入社しましたが、なかなか環境の仕事ができないでいました。それでも環境に対する関心を強くアピールし続けたところを、金融チームを率いていた上司が「忙しい時に手伝ってくれないか」と声をかけてくれ、プロジェクトに参画できるようになったのです。 

発電所の建設は、大学院でも勉強したことがなかったサンゴへの影響が論点の1つとなりました。大量の資料を読み込み、先輩に精力的にサポートいただいてプロジェクトを完遂することができました。それ以来、FRAの繁忙期を除いてサステナビリティの仕事にも携われるようになりました。

原理原則を常に意識する会計の基礎が新規事業開発を成功させる力になる

私は新規事業やプロダクトをつくる際、世の中の大きなトレンドに乗り、かつ実際にユーザーのミクロな課題をいかに解決できるかを常に考えています。

freeeでは現在、法人向けクレジットカード「freeeカード Unlimited」を運営しています。法人カードは世の中に無数にありますが、それらは基本的に個人向けにつくられたものを法人用に転用しただけ。何十年も商品の本質が変わらないという状況が続いています。

米国ではソフトウェアと連動している、または経費精算や支出管理のサービスと一体化している新たな法人向けクレジットカードが登場しています。日本でもクレジットカード利用と会計業務の連動などに課題を抱える企業多いという私たちの見立ては正しく、ユーザー数は順調に増え続けています。

金融サービスを新たに始めるとなると、金融リスクのマネージメントや財務インパクトを議論し組み立てていく必要があります。「freeeカード Unlimited」を実現するにあたり、カード事業の資金調達や与信リスク管理、それらの財務諸表へのインパクトなどを具体的に構想・実現していく際に、PwCでの経験がとても役立ちました。

私はPwC時代にFRAで会計基準を熟読する習慣を学びました。原典を確認して原理原則から考える習慣、また会計・財務・リスク管理・DDなど財務会計における広範囲な専門的知識があったからこそ、freeeが新しいビジネスを始める際に難しい判断ができたのだと思います。

個々のキャリアを尊重してくれるフラットなカルチャーが魅力

PwCには、年次に関わらずフラットでお互いを尊重したコミュニケーションを行う文化があると思います。干渉することはなくドライともいえますが、立場関係なくチームメンバーや仲間のために考えられる優しさが私の印象です。

また個々人のキャリアや意志をとても尊重してくれます。在籍時、シニアだった私を上司が会計士協会の統合報告委員会の専門委員に推薦してくれたことがあります。当時、「監査経験が無い」と指摘され、実現困難に思われましたが、上司が「従来の慣習や考え方がおかしい」と押し切ってくれたのです。その恩は今でも忘れません。

PwCでは各専門分野のプロの仕事・知識に触れることができます。多様な分野に触れる経験は、いかなるキャリアであっても、課題や必要な専門性、論点などを把握する上でとても重要になると思います。

円滑な事業開発を支えるのはバックオフィス的な強み。双方の経験を生かせる人材に

今後はfreeeで培った新規事業開発の経験を生かして、ユーザーに新しい価値を創り、スモールビジネスの生産性を高めていきたいです。そして会社をさらに一段階、非連続的に成長させていくのが目標です。またfreeeでの事業経験は、むしろバックオフィス的な強みが円滑な事業開発に不可欠であることに気づくきっかけになりました。双方の経験をベースに、改めて財務・会計などの仕事に従事する道も考えています。

小さなプロジェクトがたくさん集まって、大きな会社として成立しているのがPwCです。社内を探せば、自分の興味関心に合うもの、次のキャリアに役立つ機会がたくさんあるでしょう。公認会計士のスキルや経験を生かす先はたくさんあります。自分が持ってる知識を生かそうと固執しすぎると、どうしても視野や選択肢は狭まるもの。あらかじめ想定しているキャリアに対するシナジーをあまり気にせず、自分のミッションや目的を長期的スパンで見据え、さまざまなことに積極的に挑戦してほしいと思います。

花井一寛
freee株式会社 常務執行役員 支出管理プロダクト担当 兼 freee finance lab株式会社取締役
在学中に会計士試験に合格し、PwCあらた監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)にて財務報告およびサステナビリティのアドバイザリー業務に従事。2015年にfreeeに入社し、会計事務所向けのパートナーセールスを経て、金融を中心とする事業開発および新規事業の立ち上げを担当。2023年より常務執行役 支払い管理プロダクト担当。

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