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能登半島地震発生から3カ月後、少人数で現地調査へ【Collective Impact Base】

K.Fuji
2023年4月入社
ビジネスリスクコンサルタント


今回、なぜPwCのメンバーで現地調査に行くことになったのですか。

私たちはコモンズ活動*の一環で、2024年1月に発生した能登半島地震の復興支援チームを立ち上げました。このチームは、能登地方に所縁のあるメンバーや、何か力になりたいとの思いを抱いたメンバーが自発的に集まり、結成されました。活動の第1弾では、現地の状況や、ボランティア活動を実施するために必要な準備物・移動手段を確認することを目的として、特に被害の大きかった輪島市の現地調査に行ってきました。

各種メディアの報道によると特に輪島市の被害が大きく、伝統工芸品である輪島塗を生業にしている職人達が直近の生活に困っているという情報を得ていたため、私たちのチームは、能登の伝統工芸品である輪島塗をテーマとして活動することにしました。

私自身は、学生時代に災害に関する研究を行っていたというバックグラウンドがあります。これまで東日本大震災で被災をされた方や、被災から時間の経った土地に訪れることはありましたが、被災して一番苦しい時期に手助けすることができなかったことにもどかしさがあったので、被災から間もない土地を訪れて、自分に何ができるのかを考えたいという思いも強く持っていました。

*コモンズ活動
PwC Japanグループには、Collective Impact Baseと呼ばれる、社会課題解決に向けてコミュニティを形成し、将来的には政策提言やサービス開発につなげ、「コレクティブインパクト」を創出することを目指す取り組みがあります。その中のコミュニティ形成フェーズに当たる「コモンズ活動」では、従業員が興味関心のある社会課題に取り組むことができます。

現地調査当時、現地はどのような様子でしたか。

輪島市内では、瓦礫の撤去や下水の復旧があまり進んでいない状況でした。瓦礫の撤去に関しては、家主の立ち合いが必要という法的な問題もあり、家主が二次避難をした家は撤去が進められていない状況でした。現地の方のお話では、国道は優先的に整備が進められているものの、細い路地や一部の歩道では整備が進まず、隆起した地盤や瓦礫がそのままとなっていました。私自身、報道では局所的に被害の大きいところ、輪島市で言えば火災のあった朝市周辺がよく取り上げられていたこともあり、その他の場所の被害はそこまで大きくないと想像をしていました。しかし実際に現地を訪れると、古い家屋は概ね半壊または全壊で、市内のそこら中で家屋が崩壊していることに衝撃を受けました。

輪島市内の様子

また下水についても、地盤が大きな被害を受けたことから復旧が進まず、仮設トイレや非常用の凝固剤を使用しているような状況でした。このように市内では家などの資産が大きく被害を受けたこともあり、炊き出しは経済的にも助かるという声も聞きました。

輪島塗工房の様子

現地調査の中で、印象に残っているエピソードを教えてください。

輪島塗は、分業制で各製造工程を専門の職人が担っているため、質の高い作品を生産することができる一方で、ある1つの製造工程の職人が欠けてかけてしまうと、生産が難しくなるといった課題を抱えていることを知りました。特に今回のような災害が発生すると、直接の被災だけでなく、二次避難により、必要な職人が揃わずに生産が難しくなるということも、今回輪島塗の職人の方々に直接生の声として知ることができ、厳しい現実を目の当たりにしました。

今回の滞在中に訪問した塗師の職人から伺ったエピソードが特に印象的でした。輪島塗では高価な日本産の漆と中国産の漆の2種類をブレンドして使用しており、その配合具合が重要であるなどの漆への強いこだわりや、わずかな埃からも作品を守るために、庇のついた特殊な収納庫を使用していることなど、輪島塗職人としての高いプライドを感じました。職人というと気難しそうなイメージがありましたが、輪島塗のことを語る顔は本当に楽しそうでしたし、直接お会いして話を聞くまでは、知らなかったことが多く、非常に勉強にもなりました。

また、輪島市役所に行った際、私たちの監査クライアントが炊き出しを行っており、住民の方々にとても喜ばれている様子が個人的に印象に残っています。私の所属するリスク・アシュアランス部門は、会計監査だけでなく、企業の向き合うさまざまなビジネスリスクやシステムリスクに対して助言を行い、支援を行っています。本業のリスクコンサルティングを通じて企業を守ることにより、間接的に社会貢献につながっている瞬間を目の当たりにし、私自身、日々の業務に対するモチベーションが向上しました。この話を新卒で今年入社したメンバーに話した際、これから関わっていく業務の意義と、クライアントの業務とのつながりを感じることができたという声がありました。

輪島塗工房の様子

災害直後のボランティアのニーズについては、いかがでしたか。

4月末に能登に行った際は、ボランティアを拒む住民の声は聞きませんでしたが、寝床や食事、お手洗いの確保など、ボランティアの受け入れ体制が不十分な状態であり、ボランティア側の準備が不足している場合には「かえって気を遣ってしまい、大変だ」という声は聞きました。確かに、被災直後の時期は道路網が寸断され、人命救助や物資搬送を優先させるため、能登への移動を自粛すべきといった声もありました。しかし、現在では国道を中心に道路網は復旧し、むしろボランティアの人手不足で復旧がなかなか進まない状況であることを今回の現地調査を通して認識しました。

特に瓦礫の撤去は優先度の高い問題であることを学びました。瓦礫が撤去できないと、業者が上下水道の工事に入れず、いつまでたってもライフラインの復旧の目途が立たない状況になります。そして、瓦礫を撤去するためには、住民の立ち会いも必要となるため、住民が遠方に避難している場合には、撤去作業を進めたくても進めることができないといったジレンマがあります。今回実際に被災地を現地調査し、“何を支援するか”も含めて現在必要な支援やニーズをタイムリーに把握し、ボランティア側がしっかり衣食住の準備をした上で取り組むことが重要であると感じました。

現地調査報告について、社内からの反応はいかがでしたか。

社内イベントで現地調査の報告をしたところ、「ぜひ活動に参加したい」との多くの声をいただきました。こういった声を受け、より多くのメンバーが活動に参加できる取り組みとして、課題解決型のワークショップを現在企画しています。本現地調査の中でも輪島塗職人の方々から「輪島塗を継承したい」「能登地方を元気にしたい」との話を伺っていたこともあり、第1回のワークショップでは、輪島塗の職人達に輪島塗の現状を教えてもらうとともに、参加者には、近い将来から少し先の未来における輪島塗のあり方を考えることを検討しています。

社内向けの報告資料(抜粋)
私にとっての「Integrity」とは、「当事者意識を持つこと」です。 チームメンバーからクライアント、さらには社会全体が抱える課題に対して、自分事として捉えて働きかけることを大切にしています。今回の能登復興支援も含め、私たちが当事者意識を持って考えたアクションを受け入れる文化がPwCにはあると思いますし、私の「Integrity」を実現できる環境だと考えています。

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