若手職員がアドバイザリー業務のリーダーに聞いた!アドバイザリー業務で広がる会計士のキャリア
PwC Japan監査法人名古屋事務所の業務には監査業務の他に、非監査業務であるアドバイザリーなどのブローダーアシュアランスサービス(BAS)があります。監査以外の業務にも関心の高い若手職員が名古屋事務所のBASチームのリーダーにインタビューしました。
プロフィール
「時代のニーズに会計士がどう立ち向かうのか」が試されている
―Kawamagariさんがアドバイザリー業務に携わるに至った経緯を教えてください。
(Kawamagari)アドバイザリー業務を経験したのは、内部統制関連の支援が最初ですね。当時の監査は紙媒体が監査の対象でした。ホストコンピューターからプリントアウトされた紙に記載されている数字を監査していたのです。ただ、「はたしてこの数字は本当に正しいのか」「そもそもこのデータはどうやって作られたのか」ということに疑問がありました。当時はそういった財務データが生成されるプロセスやシステムにおけるリスクへの対応が必要であるという気運が業界でも盛り上がりを見せていた頃でした。日本にJ-SOX(内部統制監査)が導入されて、会社が内部統制資料(フロー図など)の作成を支援するアドバイザリー業務が出てきました。
(Yagami)そういう時代だったんですね。具体的にはどんなことをやられていたんですか。
(Kawamagari)会社が財務データをどのように作成しているのか、そこにはどういうシステムがあって、どの段階(部署)でどんな情報を入力するのかというような、会社のプロセスのフロー図や、リスクとコントロールを記載した表を作成する仕事でした。
(Yagami)新たな制度が導入されるなど、時代に応じて提供するアドバイザリーサービスも変わっていくのですね。
(Kawamagari)そうですね。J-SOX導入の盛り上がりが終息してからは、主として監査業務に従事し、その後タイへの海外赴任も経験しました。タイから帰任した頃に日本ではIFRS(国際財務報告基準)導入が盛り上がっていて、IFRS導入支援のアドバイザリーサービスに関与していた時期がありました。
(Yagami)時代ごとの盛り上がりというと、今はどういったものが当てはまりますか。
(Kawamagari)J-SOX導入やIFRSへの対応のような制度への対応に関するアドバイザリーサービスが終息した後は、各社のさまざまなニーズに応えるためのアドバイザリーサービスが増えていますね。例えば「会計基準をグループ会社で統一したい」「リスク管理を強化したい」といったようにニーズは会社によってさまざまです。
また、近年はサステナビリティやデジタルに関するアドバイザリーサービスが増えてきています。
(Yagami)サステナビリティはまさに今のトレンドだと思うのですが、私たち会計士はどのように関わっていくのでしょうか。
(Kawamagari)企業が事業活動により地球環境にマイナスの影響を及ぼしていれば、社会からの信頼を失い、事業活動の継続に支障が出る可能性があります。また、従業員への配慮が足りなかったり、地域住民の権利を侵害したりすれば、企業の事業価値にマイナスの影響が及ぶでしょう。このように、地球環境や社会に対して必要な取り組みを怠ることが、大きなビジネスリスクになり得ます。これらのサステナビリティ関連のリスクに対する企業の対応状況を外部に説明するための情報がサステナビリティ関連情報であり、そのような情報開示に対するアドバイザリーサービスを提供しています。今後は開示された内容に対する第三者保証が要求されることが予想されます。私たち会計士は第三者保証の担い手として、またはサステナビリティ活動および開示に関するアドバイスの提供者として活動することが期待されています。一人ひとりの会計士がどう立ち向かうのかが試される時が来ていると思います。
(Yagami)なるほど。私たち若手もサステナビリティのアドバイザリーに関わっていくチャンスはありますか。
(Kawamagari)大いにあります。今年はCSRD(企業サステナビリティ報告指令)とIFRS S1(サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的な要求事項)、IFRS S2(気候関連開示)が承認され、サステナビリティ関連情報の開示に関しては節目の年だと思います。私たちが支援できるところはたくさんあり、若手の皆さんは意識せずとも、自然と組みこまれていくと思いますね。
(Yagami)デジタルに関連したアドバイザリーサービスにはどういうものがありますか。
(Kawamagari)デジタルといっても領域が広いです。例えば今、いくつかの企業で起こっている問題の1つに、経理専門職の不足ということがあります。長年経験を積んだ方が定年退職を迎え、新規採用が容易ではない状況に頭を痛めている経営者は多くいます。例えば、そんな企業に対し、デジタル技術を活用した、今まで数時間かけてやっていた仕事を数秒で完了できるようなツールの導入を支援しています。また、企業が保有する財務データや活動データを活用して不正等のリスクを管理するといった支援もあります。
(Yagami)不正リスクの管理は、監査にも近しいところがありますね。
(Kawamagari)そうですね。監査ではリスクを識別し、財務情報への影響を評価しますよね。企業のリスク管理活動を対象としたアドバイザリーサービスでは監査の考え方が十分に活用できますね。
(Yagami)なるほど! では私たちが学んでいる監査基準や監査手法は勿論のこと、受験生が学ぶ監査論もアドバイザリー業務につながっているんですね。
クライアントの悩みに対して支援すること
―アドバイザリー業務を経験することで、監査業務に活きてくることはありますか。
(Kawamagari)監査にはさまざまな業務があります。アドバイザリー業務の経験が活きるかどうかは監査の中でも何の業務かによっても違ってきますが、例えば不正リスクへの対応として仕訳データのチェックを行う業務であれば、先ほどお話しした不正リスク関連のデータモニタリングの経験は活きてくるでしょうね。また、内部統制構築支援のアドバイザリー経験は、監査の中で実施する内部統制の評価の業務に活きてくると思いますね。
(Yagami)今までのお話の中で、アドバイザリー業務はクライアントと一緒に成果物を作るようなものであるとのイメージを持ちました。クライアント側に立ってサービスを提供することで、監査を受けているクライアント側の考え方が分かってくるのでしょうか。
(Kawamagari)クライアントとの会話の中でお悩みをお聞きし、それに対して「こんなご支援ができますよ」と提案していく中でクライアントと同じ目線でお悩みやアイデアを共有することができます。先ほど例に出したように、「ベテランの経理職員が退職したら業務が回らなくなる」というようなお悩みに対して、業務の標準化や自動化を提案する、という感じです。
(Yagami)確かに監査クライアントでもそんな話はよく聞きます。そんな課題に対して支援して、お役に立てるのは素敵なことですよね。
興味があることを勉強してチャレンジしていくことが大事
―Yagamiさんはもともとアドバイザリーにも興味があるとのことですが。これから先はどんなキャリアを考えていますか。
(Yagami)監査とアドバイザリーのどちらも経験したいのですが、どういうキャリアを描くべきかというのは悩みますね。
(Kawamagari)そうですよね。「まずは監査でしっかりと経験を積むべきだ」というのが一般的な考えかもしれませんが、「これが王道」とか「他の多くの人はこうだから」とかいうことに囚われる必要はないと思いますよ。実際、監査をやっていてもその経験というのは人それぞれ違いますからね。だから柔軟に考えて、その時にやりたいと思ったことに対して足を踏み出すことが大事だと思います。何か興味を持っていることがあったら、まずは勉強から始めて、業務提供の機会があったら思い切ってチャレンジしてみるというのもいいのではないでしょうか。
(Yagami)確かに、多くの人と同じキャリアでなくても、「今、自分がこうしたい」という価値観を大事にチャレンジしていきたいと思います。
(Yagami)アドバイザリー業務にチャレンジするためには、どんな準備が必要ですか。
(Kawamagari)自分が興味をもったことに対して情報を仕入れ、詳しい人と話をすること、自分で勉強してみることだと思います。英語力のように客観的な指標は無いので、多くのことに興味を持ち、多くの人の話を聞くことが重要ですね。
(Yagami)自分の興味に応じて情報を仕入れて、チャンスがあれば飛び込んでいくというのは、1つのやり方なんですね。
(Kawamagari)Yagamiさんの学生時代の活動とかを聞いていると、きっとYagamiさんには適性があると思いますよ(笑)
グローバルに展開している大企業の監査経験が強みになる
―PwC Japan監査法人名古屋のBAS業務にはどんな特長や醍醐味がありますか
(Kawamagari)PwC Japan監査法人名古屋事務所はグローバルに展開している複数の大企業の監査をさせていただいています。私たちは監査業務を通じてそのような大企業のガバナンスやリスク管理のプロセスを学んでいます。トップ企業の取り組みを学ぶことが、アドバイザリー業務を実施していく上での強みになっています。
(Yagami)まさに今携わっている監査経験が他にはない強みになるということなんですね。名古屋事務所のアドバイザリー業務の特長は他にどんなことがありますか。
(Kawamagari)メンバーの皆さんはいろんなことをやっています。名古屋ではさまざまな領域に関わっていくことができますので、自分が興味をもてる領域も見つけやすいと思います。また、サービスの提供に限らず、クライアントとの継続的なコミュニケーションを行っています。
(Yagami)クライアントと関係を深くしていくという活動ですね。とても楽しい仕事ですね。アドバイザリー業務はやはりサービスの領域が広いからこそ、クライアントのさまざま方と関係を構築し、ご支援できるというのは魅力的ですよね。関係を構築するコツみたいなのはありますでしょうか。
(Kawamagari)クライアントのご担当者は忙しい中でお時間を作ってお会いいただくので、この人と話すと何かを得られる、役に立つと思っていただくことが大事ですね。そのためには、私たちが好奇心をもってさまざまなことにアンテナをはって、常に勉強していくことが大事です。
(Yagami)クライアントとの関係が深くなればなるほど、自分があまり詳しくない領域のご相談を受けることもあるかと思います。その時はどうするのですか。
(Kawamagari)そうなんですよ。クライアントの方々は私たちのことを「PwC」として見ていますので、監査法人としては専門外のことをご相談いただくこともあります。その時はPwC内のネットワークを活用します。税務の内容であればPwC税理士法人の知り合いにつなぐこともありますね。直接私たちがサービス提供しなくても、PwCとしてクライアントのお役に立てるのなら嬉しいですね。そのようなコミュニケーションを取るためにもPwC内のネットワークも広げていくことはとても大切だと思っています。
(Yagami)法人や部門の垣根が低く、柔軟に協働していけるのがPwCの良いところだと思いますので、私も今からPwCの中で仲間を増やしていきたいと思います。
―最後にこれからの目標を教えてください。
(Kawamagari)名古屋のアドバイザリーチームとして、もっと幅広いサービスを提供していけるようになることが目標ですね。私を含めメンバーは、日々勉強することと、さまざまなことにチャレンジするということを続けていきたいと思います。そういう人財の集まりになっていけば、きっと実現すると思っています。
(Yagami)私もこれからより一層、さまざまなことに興味を広げ、チャレンジしていきたいと思います。